「劇場に行こう」 ~ 憧れのワーグナー ~(2014年4月17日 木曜日)
何かオペラネタないかしら?と探してみましたがなかなか見つからず。
もしNY在住の私のオペラ師匠に聞いてみたとしたら、きっと
「あなた、何を仰ってるの?オペラはネタの宝庫よ!」と怒られることでしょう。
色々引っ張り出してみていたら面白いものが見つかりました。
2007年は私の本格的なワーグナー・デビューの年です。
皆様は「ワグネリアン」という言葉をご存知でしょうか?ワーグナーが好きすぎて好きすぎてたまらない人達のことをこう呼ぶのですが、オペラい興味を持ち始めたその当時、この「ワグネリアン」という言葉とその強烈な存在感(とワーグナーへの偏愛っぷり)に畏敬の念を感じていた私は、ワーグナー・オペラはあまりに敷居が高すぎて、観に行くのはまだまだ先の話だと思っていました。
ところが、その年にあったのがベルリン国立歌劇場の来日公演、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」。
10年早い、と憧れはあれど行くことは考えていない私に師匠から1通のメールが届いたのです。
「ベルリンのトリスタン、これはなかなか強力な布陣。(中略)私が日本にいたら、このトリスタンは絶対観に行ってます。」
うーん、、、、、、、、、、では!!! 行かせていただきましょう!!!!!!!!!!
それまで全幕を通しで聴いたことのないトリスタンでしたが、師匠イチオシのフルトヴェングラー指揮の名盤をすぐさま購入。
その日からとにかく聴き続け、4枚組なので結局は公演までに3回しか聴けませんでしたが、限られた時間の中で先ずは猛予習。
鑑賞を翌日に控えたその夜、私は師匠にこんなメールを送っていました。
「明日はいよいよワーグナー・デビュー。まさかこの日がこんなにも早くこようとは、、、なんという生意気な私。
年季の入ったワグネリアン達に負けないよう、明日は鼻息も荒くNHKホールに乗り込んでやります。
ホールまで続くあの長い道をどすこい!どすこいどすこいどすこい!と四股を踏みながら力強く進んで行くつもりですが、扉を抜けたらそこはもうワグネリアン達が集うめくるめく世界だなんてとても楽しみです。感想を待っててね。」
ものすごいワクワクっぷりですね(恥)。
公演当日、私はワーグナーに魂を鷲掴みにされてしまったのですが、幕間に集う年季の入ったワグネリアンのおじさま達の素敵っぷりにもイチコロでした。
人生初のワーグナーは指揮、オケ、歌手、全てが期待を上回り、世界最高レベルの舞台で大満足だったのですが、この舞台が私のワーグナーのデフォルトとなったわけで、つまり師匠に言わせるとワーグナーに関して大変高いハードルを設定してしまい、今後生半可なワーグナーでは恐らく満足出来ないであろうということにもなってしまったわけです。
その公演は、指揮が世界に名だたるダニエル・バレンボイム、キャストに現代最高のバスと言われるルネ・パペ、ワーグナー歌いの名手ワルトラウト・マイヤー、クリスティアン・フランツ、そして若手ホープ(当時)のミシェル・デ・ヤング等々、、、、。今から思うと初めてのワーグナーでこんなの観ちゃったとはやはり贅沢。何という幸せ。ブラボー、ベルリン・シュターツカペレ。
さて、ワーグナーに身も心も持って行かれてしまった公演終了後の私はすっかり抜け殻となってしまい、夜風に吹かれてよろめきながら何とか自宅に帰り着いたのですが、抜け殻ながらアドレナリン放出はおさまらず、演奏の出だしからこと細かく描写しつつ、全幕分の感想を詳細にしたためて師匠に送りつけたのでした。
「あなたがこんなに喜んでくれて本当に良かったわ。私も嬉しいです。お勧めした甲斐がありました。」
自分が送りつけた文章を読み返すと本当に長い!よくぞここまで、というくらい描写が細かくて、どれだけ感激したかがいやでも伝わってきます。熱い文章であると同時に初々しくて、その当時の興奮が蘇ってきました。
最後の部分を少しだけ抜粋させて頂きますと、
「何人もの人が弾く弦がたった1本の音にしか聞こえないなんて凄すぎます。音がどんどん細くなっていくのですが、消える直前のかすかな音まで聴こうと、あの瞬間は会場の皆が息をしていないのではないかと思うほどの静寂と緊張感に満ち満ちていました。バレンボイムの指揮棒が止まった瞬間、誰かの悲鳴のような「ブラーボ!」がひときわ甲高く響き、後は拍手拍手拍手拍手拍手拍手、割れんばかりの拍手とブラボーの嵐。私は音楽が止まった瞬間、どうにもこうにも感極まってしまいました。5時間、眠くなることもなく、お尻が痛くなることもなく、ただただこの空間にいられたことを心から感謝。おススメして下さったあなたにも死ぬほど感謝しています。こうして長い文章を書きつつ興奮がおさまらないので、3日後の最終日の公演、チケットは売切だそうですが、何とかあの手この手を使って行くことに決めました。」
いや~、熱い!そして初々しいけどかなりうざいですね、私。
最終日は当日券販売の窓口は閉まって「満員御礼」の看板のみ。その場でへなへなと崩れ落ちそうになった私に近付いてきた男性がおりました。
台湾からはるばるこの公演のためにツアーを組んでやってきたものの、1人分のチケットが余ってしまったということで幸運にもチケットをお譲り頂けたのです。
幕間は台湾版ワグネリアン達7人のお仲間にも入れて頂くことが出来、今となっては本当に素敵な初ワーグナーの思い出です。
さて、あまりにも懐かしすぎて、今回も大暴走。
朝から長ーい文章にお付合い頂き有難うございました。