夢で、また逢えたら

オペラ、バレエが大好き。2009年に人生で初めてジャニーズの嵐と出会い、V6三宅健が気になりだし、2016年春に華麗なダンスとアクロバットで魅せるSnow Manに完全陥落。Je t'aime et je t'aimerai pour toujours.

「続・劇場に行こう」 〜 The Audition 〜メトロポリタン歌劇場への扉 〜 (2016年2月26日)

本日はずいぶん前に観た映画の話です。

 

「The Audition 〜メトロポリタン歌劇場への扉」は、NYのメトロポリタン歌劇場で毎年行われているオーディションの2007年のドキュメンタリー映画で、日本では2009年に公開されました。

上映期間が2週間と非常に短く、上映も限られた劇場のみ。どの劇場でも上映が1日1回だけ、という中で頑張って行ったのですが、その甲斐ある、余韻の残るいい映画でした。

 

応募者1,500人の中から、オーディションを勝ち抜いてきたファイナリスト11人の話ですが、レッスンをこなしながらさらに力をつけ、夢の舞台を目指す過程が非常に興味深く描かれていました。

映画の中で、芸術監督であるジョナサン・フレンドの一言「大切なのは技術ではなくどう伝えるか。」は当たり前だけど的確で、今でもしっかり記憶に残っています。

プロフェッショナルですから、技術が一定のレベル以上であるのは当然ですが、技術がどんなに優れていても、「伝える」ことが出来なければ聴く人を感動させることは出来ないのだよ、ということです。

そういえば、技術が優れているのに感動が湧き上ってこない、そんな舞台を観たことは何度もあり、一方で、多少音が正しいところにヒットしなくても熱のあるいい舞台もあり、まさに伝えようとしていることが「伝わる」か「伝わらない」が舞台の出来の違いなのでしょう。

 

様々な葛藤と人間模様の中で、短い期間にもかかわらず最高の指導者達の元、暖かい励ましと的確なインストラクションで成長を遂げていく歌手達の底力というものを映画を通して目の当たりにし、世界の一流の舞台に上がろうとする歌手達の努力、貪欲さ、それに、改めて芸の道への厳しさを思い知りました。同時に、夢を目指して進むということはなんとエネルギッシュで素晴しいことなんだろう、と感じるとてもいい映画でした。

 

当時の私のお気に入りはワーグナーを歌ったアンバー・ワーグナー、「ノルマ」から「清き女神」を歌ったアンジェラ・ミード、「連隊の娘」から「メザミ」でハイCをしっかり決めたアレックシュレーダー、そしてチレアを歌ったライアン・スミス。

 

アンジェラ・ミードは2008年に体調不良の歌手の代役で急遽舞台に立ったことをきっかけにメトでデビューし、その歌唱の素晴らしさで賞賛を得、その後は毎年メトで重要な役をこなす一流歌手の仲間入りを果たしました。

レックシュレーダーも時々メトで歌っているようですし、アンバー・ワーグナーはメトでの活躍は耳にしませんが、きっと世界のどこかの舞台で活躍しているのかも、、、と思いつつ、時々ネットをチェックしたりしています。

 

ライアン・スミスは貧しく、様々な事情から歌を続けることが出来ずに 一旦は歌から離れたのですが、2年だけ、2年経って芽が出なければ歌手の道は諦めると両親と約束し、成功を夢見て歌の道に戻ってきました。一流の指導者の下、信じられないスピードで素晴しい歌手へと変貌していく様子は、映画を見ながらも本当にワクワクしてしまいました。

本選で歌い終わった後、拍手の嵐の中を小走りで舞台の袖に引っ込んだ途端、ボイスの先生が感極まって涙しながら駆け寄り彼をハグ。彼もハグされながら、やり遂げた感満々の笑顔いっぱいで、歌を愛して愛してやまない、という気持ちが溢れ出ていました。この時は映画館の客席ももらい泣き、すすり泣きで溢れていました。

 

見終わって感動に浸っている中、映画のエンドロールに「この映画撮影から1年半後の2008年11月、ライアン・スミスが悪性リンパ腫でこの世を去った。」という一文を見つけた時はとてもショックでした。

残念ながら彼は大きく華々しくこの世に出ることは叶わなかったけれど、こうして人生の一瞬の素晴しさを切り取ったような、こんないいフィルムが残り、何年も経った今でもこうして感動を残してくれていることは本当に凄いことだと、今も思っています。

 

本選の入賞者も、入賞しなかった人たちも各々活躍をしているようですし、いつかきっとどこかで彼らの舞台にめぐり会って、また違う感動を得たいものです。

 

さて、ずいぶん前に見た映画のことをどうして今頃、、、、とお思いになられたでしょうか?実は、つい先日、この映画のDVDをようやく見つけて購入したのです。

手元に届くまであと2週間ほどかかるようですが、待ちきれず、かつての記憶を思い起こしながら、今朝はこの映画のことについて書かせていただきました。

 

本日もどうぞよろしくお願いいたします。