夢で、また逢えたら

オペラ、バレエが大好き。2009年に人生で初めてジャニーズの嵐と出会い、V6三宅健が気になりだし、2016年春に華麗なダンスとアクロバットで魅せるSnow Manに完全陥落。Je t'aime et je t'aimerai pour toujours.

「続・劇場に行こう」 ~涙と感動、最後の「ボレロ」 ~ (2016年1月28日)

あっという間に1月が終わろうとしています。ついこの間新年を迎えたばかりだというのに、月日が経つのは本当に早いものです。

、、、、、なんてことを書いておきながら申し訳ありません。今更ではありますが、昨年末のお話です。

 

皆様はジルベスター・コンサートをご存知でしょうか?

「ジルベスター」とはドイツ語で「大晦日」を表す言葉です。オーチャードホールで毎年行われる、大手企業冠のこの公演は、日本国内で開催されるクラシックの代表的カウントダウンコンサートで、今回の2015-2016年で21回目となりました。

 

過去にも錚々たる演者がカウントダウンを華やかに盛り上げたのですが、2009-2010に引続き、マエストロ・大友直人氏が率いる今回のジルベスターの見所は、なんと言ってもシルヴィ・ギエムの「ボレロ」。

 

ギエムは、パリ・オペラ座のエトワール、英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルをつとめた以外に、各国のカンパニーでゲスト・ダンサーとして招かれ活躍した現代最高のダンサーで、100年に1人出るか出ないかとまで言われるほどのバレリーナです。

50歳で引退を決めた2015年、世界各地で最後のツアーを行った彼女がラスト・パフォーマンスの地として選んだのが、日本でのこのジルベスター・コンサートでした。

 

彼女の代名詞のように言われた「6時のポーズ」、、、 1本の足で立ち、もう片方の足を耳につくほどまっすぐ垂直に上げても、彼女の軸は全くぶれることはありません。彼女の身体は信じられないくらい、しなやか且つ強靭で、恐らくすべてのバレエダンサーが、喉から手が出るほど欲しい、そんな身体の持ち主です。

 

今回披露された「ボレロ」はラヴェル作曲の10数分ほどの楽曲に、モーリス・ベジャールが振付けた作品で、ギエムの代表作品の1つでもあります。

ベジャールが認めたダンサーのみが踊ることを許されている作品で、踊りたいからと言って誰もが踊れるわけではありません。ギエムは「踊ることを許された」ダンサーの中の1人なのです。

休みなく単調なリズムを刻み続け、踊り続け、後半に行けば行くほど動きが大きく激しくなる容赦ない振付けで、魂が入り込んだ一流ダンサーの踊りは観る人を圧倒します。

 

指揮の大友直人氏が薄暗い舞台の上、僅かな灯りの中でそっとタクトを動かし始めると、静かに静かに音が流れ始めます。

真っ暗な舞台の上、赤い円卓の上に立ったギエムの手だけにスポットライトが当たり、まるで天の岩戸を少しずつ開いていくかのようにゆっくりと弧を描いていきます。単調なリズム、単調な動きから始まり、楽器が加わっていくに従い、ライティングも踊りも少しずつ変化していきます。彼女が旋律を踊り、男性のみで構成された群舞がそれを取り囲むようにリズムを踊ると、舞台の上もオーケストラも、そして観客も音楽と共に少しずつ高揚していき、あとはクライマックスに向かってただただ一気に昇華していく、そんな作品です。

 

彼女が踊る姿を観るのは本当に、本当に、本当にこれが最後だと思うと、瞬きも息をも止めたい気分でした。

非常に丁寧に踊っている彼女を観ていると、引退するなんてとても勿体なく思うのですが、全ては彼女の決断。とにかく、ラストを迎えるこの空間に共にいて、同じ空気を吸っている幸せと感謝、今この目で舞台を観ている感動だとか、淋しさだとか、過去に観に行った舞台での彼女の姿を思い出したり、全ての感情が一気に上がってきてしまいました。同時に、その場にいることが実感できないようなふわふわした不思議な感覚もあり、そんな中で、彼女の魂のこもった一挙手一投足を見逃さないよう、ただただ舞台を見つめるのみ。

 

終盤に向かうにつれ、ギエムの踊りも表情も凄まじくなり、それを彩るオケも鬼気迫っていたように感じたのは私だけではなかったと思います。会場全体の空気は最後まで張りつめたままで、熱気がどんどん高まって行き、ギエムが円卓の上で力強く手を伸ばしたかと思ったら、次の瞬間、周りからかぶさってくる沢山の手の中に消え、同時に音楽が最高潮のところでぴたっとと止み、舞台は暗転。

何もかもが一瞬で終わった、まさにその「瞬間」にギエムは遂に踊りをやめ、観客にさようならを残し、2015年は終わりを告げ、そして2016年を迎えました、、、、、圧巻。

 

私の2016年は、凄まじい熱気、高揚、最高の感動、涙と鳥肌とブラボーで始まりました。

この気持ちのまま、2016年を駆け抜け、今年もまたオペラをはじめとする舞台芸術鑑賞に勤しみたいと思っている次第です。

 

さて、この模様は生中継されており、私も年が明けて落ち着いてから録画していたこの番組を見直しましたが、この放送を見てびっくりしたことが2つありました。

 

まず、2015年から2016年に変わる瞬間にぴったりとボレロの演奏が終わっていたこと。

演奏とカウントダウンのタイミングを合わせるのはとても困難で、過去には結構なタイミングのずれのあった回もありましたが、とりわけボレロは、音楽が最高潮のところで終わるため難しく、ギエムの有終の瞬間であったことを考えると、このタイミングは本当に凄いことだったと思います!ブラボー、マエストロ!

 

踊り終わった直後に流れたギエムの最後のメッセージは、今思い出しても、そしてこれを書きながらでもまた泣けてきてしまいます。

「さようならは決して簡単なことではありません。どのように言っていいかもわからないし、本当は言いたくもありません。

でも私は踊ることが大好きです。ですから踊りを皆様のために、このさようならに!!!

あぁ、涙、涙、涙。

 

2つ目は、鳴り止まないカーテンコールとスタンディングオベーションの観客の中に、おもちゃのチンパンジーの100万倍くらいの速さで必死に手を叩いている私が画面の中にいたこと。

間違いなく感動の最高潮に達していたその瞬間なのですが、客観的に見てなんとブ〇〇クなことかと、、、、、おかげさまで私以外、家族全員揃の初笑いの種となりました。

納得行かない点もありますが、先ずは周りに笑顔をもたらしたということで、これもまたいいスタートを切れたと自分自身を納得させております。